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「クレーン機能を備えた車両系建設機械」について
1.これまでの経緯
当初、車両系建設機械による荷のつり上げは、一定の要件を満たした場合の土止め支保エの組立等の作業を除いては用途外使用として禁止されていました。
しかしながら、上下水道や電気・ガス等の工事現場においては、掘削以外に物をつり上げる作業がしばしば必要であり、その都度移動式クレーンを手配するよりは、その構造上、比較的容易に物をつり上げることができる油圧ショベルに箇単なつり金具等を取り付けて代用してしまうことも多く、このため災害も発生していたところです。こうした現場における実状と災害を背景に、平成4年に労働安全衛生規則第164条が改正され車両系建設機械の「主たる用途以外の使用の制限」が緩和され「作業の性質上やむを得ないとき又は安全な作業の遂行上必要なとき」のような特定条件下で次のような安全措置を講じることにより、荷のつり上げ作業が認められることとなりました。
ところが、この緩和措置の拡大解釈もあり、油圧ショベルによる荷の吊り上げ作業に伴う重大災害が多発するようになりました。この状況をふまえ、(株)日本クレーン協会において、労働省(現厚生労働省)の委託を受け、平成10年にJCA規格(日本クレーン協会規格)として「油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンの過負荷制限装置」を制定しました。この規格のポイントは「つり上げ荷重が3t未満の油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンに装備する過負荷制限装置」について、その機能、構造、性能等を規定したものです。
油圧ショベルによる荷の吊り上げが認められる条件
- 作業の性質上止むを得ないとき作業の一環として、土砂崩壊による労働者の危険を防止するため、土止め用矢板、ヒューム管等を吊り上げる作業
- 作業場所が狭く、移動式クレーンを搬入して作業すると、作業場所が錯綜して危険が増す場合
講じなければならない安全措置
- アーム、バケットに次のいすれにも該当するフック、シャックル等吊り上げ用器具を使用すること。
- 外れ止め装置が使用され、吊り上げた荷が落下するおそれのないこと
- バケット等作業装置から外れるおそれがないこと
- 負荷させる荷重に応じた十分な強度があること
- 作業開始前の確認
- 合囮を定め、合図者を配置すること
- 平坦な場所で作業を行うこと
- 吊り上げた荷との接触や落下で労働者が危険となる箇所に立ち入らせないこと
- 最大荷重を超える荷は吊らないこと
つり上げる荷の最大荷重は、つり上げの能力(バケット容量Xl.8)以下であって、かつ、つり荷とつり具の合計質量がlt未満であること。 - 作業中は、作業機操作・旋回は低速運転を行う
注:「こんな場合は認められない』
掘削作業の一環として行う作業でも、移動式クレーンを搬入するスペースがある場合は認められません。また、掘削作業の一環といえない、一般機材や敷き鉄板などの吊り上げ作業は行うことはできません。
2.「クレーン機能を備えた車両系建設機械の取扱いについて」について
- 法令上の位置づけについて
ドラグショベル等の車両系建設機械は、車両系建設機械に係る規定及び移動式クレーンに係る規定の両方が適用される。したがって、構造要件についても、両方の構造規格が適用されるものである。 - クレーン作業について
当該機械を用いたクレーン作業は、労働安全衛生規則第164条に規定する「用途外使用」には該当しない。すなわち、クレーン機能を備えた車両系建設機械は、正式に移動式クレーンとして使うことが認められた。なお、移動式クレーン構造規格に規定する安全装置等については、必す有効な状態にして使用しなければならない. - 資格関係について
当該機械を用いてクレーン作業を行う場合の運転等の資格は、移動式クレーンの運転と同様当該機械のつり上げ荷重に応じた運転の資格が必要であり、また、玉掛けの業務についても玉掛けの資格が必要となる。また、掘削作業等車両系建設機械の用途で作業を行う場合は、その用途及び機体質量に応じ、車両系建設機械運転技能講習修了者又は車両系建設機械の運転の業務に関する安全のための特別教育を受けた者が行う。
クレーン機能を備えた車両系建設機械のクレーン作業に必要な資格
作業内容 | 荷重又は質量 | 必要な資格 |
---|---|---|
クレーンの業務 | 5t以上 | 移動式クレーン運転士免許所持者 |
1t以上5t未満 | 小型移動式クレーン運転技能講習修了者 | |
0.5t以上1t未満 | 移動式クレーン特別教育修了者 | |
玉掛けの業務 | 1t以上 | 玉掛け技能講習修了者 |
0.5t以上1t未満 | 玉掛け特別教育修了者 | |
積込、掘削の業務 | 機体質量3t以上 | 車両系建設機械運転技能講習修了者 |
機体質量3t未満 | 車両系建設機械運転特別教育修了者 |
3.安全作業のための注意点
クレーン付油圧ショベル(MLクレーン掘削機)は2つの機能(ショベル機能/クレーン機能)を持っています。
目的によって、確実に使い分けしましょう。
- クレーン作業時は、必すクレーン用安全装置等を有効(クレーンモードON)な状態でこ使用下さい。
- フック他安全装置に異常のないことを確認して下さい。
- 仕様で定められた荷重以上の荷は絶対につらないで下さい。
- 横引き、縦引き、引き込み及び旋回による引き回し作業はフック等の損傷の原因となり、重大事故をひき起こす恐れがありますのでしないで下さい。
- バケット作業時は必す吊りフックを格納して下さい。フックが破損し、クレーン作業時重大事故をひき起こす恐れがあります。
災害を防止するためには何よりも直接作業に携わっている運転者、合図者等の安全作業に対する意識が大切です。クレーン作業開始前に安全装置に異常のないことを確認し、安全装置を正しく取扱い、その機械の定められた性能範囲内の運転を順守し、安全作業を行って下さい。かりにも、安全装置の機能を停止させた運転は絶対に行なわないで下さい。